本記事では、GenZAIプロジェクトのチリ調査にもとづく学術論文の概要を紹介する。
Lionel Brossi(チリ大学)、Ana María Castillo Hinojosa(チリ・オーストラル大学)、高橋利枝(早稲田大学)による論文「チリの若者のAIとロボットに対する見解——探索的研究(Chilean Youth’s Perspectives towards AI and Robots: An Exploratory Study)」は、2023年12月、ブラジルの学術誌 Passagensに掲載された。
研究の位置づけ
GenZAIは、JST(科学技術振興機構)ムーンショット研究開発プログラムの一環として、2021年に日米英3か国を対象とした異文化間比較研究として始まった国際プロジェクトである。2022年以降、チリ・シンガポール・中国・イタリア・スペインへと対象国を拡大している。本論文は、そのチリ調査の成果をまとめたものである。
研究の概要
チリの都市部に住む12〜17歳の若者30名(男性15名・女性14名・ノンバイナリー1名)を対象に、構造化質問票によるインタビューを通じてデータを収集し、テーマ分析により質的に分析した研究である。低所得層から上位中間層まで幅広い所得階層の参加者を含む。以下の4つの領域を探索している。
・2050年の社会と自分の生活への展望
・AIおよびロボットに対する認識と態度
・社会的善のためのAI・ロボット活用
・適応と自己創造
主な知見
AIへの関心と限られた知識
参加者の多くはAIやロボットに関する体系的な知識を持たず、映画やニュース記事を主な情報源としていた。「AI」にはアルゴリズムや知性の概念を、「ロボット」には物理的な機械のイメージを結びつける傾向が見られた。一方で、社会的影響に対しては全体として肯定的な態度が示されている。
人間中心の技術観
多くの参加者が強調したのは、「ロボットは補助であり、代替ではない」という考え方である。医療・教育いずれの場面でも、最終的な判断や感情的なサポートは人間が担うべきだとする姿勢が一貫していた。
「ロボットはある教科についてのあらゆる知識を持っていて、考えることすらなく答えるだろうから、その方が優れていると思います。(採点においても)先生は間違いを犯すけれど、ロボットは全部知っていられると思うし、すごくいいと思います。」(13歳、女性)
環境と持続可能性への関心
2050年の展望として、若者たちが重視したのは技術の進歩そのものより、それによって実現される持続可能な社会だった。電気自動車や廃棄物処理、医療技術の革新など、社会課題の解決に資する技術としてAIを位置づける声が多かった。
雇用への期待と不安
ロボットによる雇用代替への不安は広く共有されていたが、同時に、反復的・危険な作業の自動化や、データ分析など新たな職種の創出に期待を寄せる参加者も少なくなかった。
倫理・責任への意識
自動運転における責任の所在やアルゴリズムの偏りなど、倫理的な問いにも参加者は関心を示していた。技術の活用をめぐる議論が、社会正義や平等といった価値観と結びついている点が特徴的である。
論文情報
著者: Lionel Brossi(Universidad de Chile)、Ana María Castillo Hinojosa(Universidad Austral de Chile)、Toshie Takahashi(Waseda University, Tokyo)
掲載誌: Passagens — Revista do Programa de Pós-Graduação em Comunicação da Universidade Federal do Ceará, v. 14, n. especial, dez. 2023, pp. 83–109
DOI: 10.36517/psg.v14iespecial.88782
インタビュー記事を読む
この研究に参加したチリの若者5名のインタビューは、以下の個別記事で読むことができます。
▶ Interview Series: Gen Z Meets AI × Chile — Valentina, 14
▶ Interview Series: Gen Z Meets AI × Chile — Camila, 13
▶ Interview Series: Gen Z Meets AI × Chile — Isabella, 14
▶ Interview Series: Gen Z Meets AI × Chile — Sofía, 12
▶ Interview Series: Gen Z Meets AI × Chile — Daniela, 14
