2026年4月17日、大学生数十名が集まり、「いいねの外側で考える、わたしの幸せ」をテーマにしたワークショップを開催した。SNSや生成AIが日常に溶け込む今、幸せの基準は知らず知らずのうちに「他人の目」に引き寄せられてはいないか。この問いから出発し、参加者たちは普段何気なく使用しているデジタルメディアと向き合いながら、自分自身の言葉で未来を描き出した。
本記事では、ワークショップの終盤で行われた「2050年、あなたが幸せだと感じるAI社会の日常風景」をテーマにした7グループによる創作成果を紹介する。各グループは話し合いの内容をプロンプトにまとめ、生成AIで一枚のイラストとして可視化した。若者たちの視点から生まれた、身近で地に足のついた未来像である。
ワークショップの背景
近年、SNSやショート動画を通じて「映える暮らし」「憧れのライフスタイル」が大量に流通している。便利で楽しい一方で、幸福の基準が他人からの評価——いいねの数や見栄え——に傾きやすい環境でもある。今回のワークショップは、そうした「他人軸」の幸福感から一度離れ、自分のリアルな感覚に根ざした「自分軸」の幸せを見つめ直すことを目的として設計された。
具体的には、(1) SNS上で流通する画一的・フェイクな幸福像を批判的に読み解くクイズ、(2) 自分が幸せを感じる要素を言葉にして書き出す「成分表示」ワーク、そして (3) その成分をもとに「2050年の幸せなAI社会」を生成AIで描き出す創作ワーク——という3段階で構成された。
本記事のメインは、最後の創作ワークの成果である。参加者たちは「専門家や大人の視点ではなく、日常生活に近い感覚を重視する」「世界規模の社会変革ではなく、身近な暮らしの変化を中心に描く」「正しさや理想論よりも、その人たち自身が幸せだと感じるかどうかを基準にする」という条件のもと、2050年の風景を言葉とイラストで表現した。
1班 ― みんなに余裕がある暮らし
AIが主に担っていること:家事(トイレ掃除、洗濯)、タスク管理、争いの仲裁、目覚まし。
幸せを感じる瞬間:家族といるとき、美味しいものを食べたとき、のんびりした時間、二度寝、タスクがない時間がちょうどよくあるとき(やらなきゃいけないことと暇な時間のバランス)。
余白の時間の使い方:会いたい人に会う、旅行、料理(こだわったお菓子作りなど)、何もしない。
社会全体のキーワード:みんなに余裕がある暮らし。

2班 ― 自由
AIが主に担っていること:インフラの稼働、戦争(人間の代わりに)、家事(皿洗い・洗濯)、出産。
幸せを感じる瞬間:自然に触れる瞬間、ハイボールを呑む瞬間、身体的・精神的に健康であること。
余白の時間の使い方:ハイボールをたしなむ時間、スポーツ観戦、映画鑑賞。
社会全体のキーワード:自由。

3班 ― 自分で時間を使える社会/HAPPY
AIが主に担っていること:単純作業、家事。
幸せを感じる瞬間:人との交流、うさぎを撫でる、ポテトを食べる、勉強。
余白の時間の使い方:幸せの創造・追求。
社会全体のキーワード:自分で時間を使える社会/HAPPY。

4班 ― 快適・自由時間・充実
AIが主に担っていること:事務作業、計算、予定・時間の管理、家事(掃除・洗濯・料理)、仕事(労働)、ExcelやPowerPointなどの単純作業、やりたくない仕事、人間が行きたくない授業に行くこと、運転。
幸せを感じる瞬間:人と話しているとき、誰かとご飯を食べるとき、自分の身体が健康だったとき、美味しいごはんを食べたとき、しっかり眠れるとき、気持ちよく起きられるとき、天気がいいとき、朝起きて晴れているとき、旅行に行くとき。
余白の時間の使い方:睡眠、ゆっくりごはんを食べる、趣味、旅行。
社会全体のキーワード:快適、自由時間、充実、余計なことをしない。

5班 ― 効率化とハイブリッドの最先端
AIが主に担っていること:接客業、家事(料理・単純労働)、宅配、運転、内科医(薬など)。
幸せを感じる瞬間:友達と会ったとき、自然や動物を見たとき、店員さんに「ありがとう」と言ってもらえたとき、人が作った料理を食べたとき、現地に足を運んで旅行するとき。
余白の時間の使い方:仕事、育児、自己研鑽、絵や音楽、余暇、マンガを読む、布団ダイブ。
社会全体のキーワード:効率化、楽しい最先端、イライラ(効率化されたがゆえに遅延が起きたときなど)、軽量化、ハイブリッド。

6班 ― 平和・自由・ロボットとの協調
AIが主に担っていること:業務効率化、検索、相談相手、課題の手助け、情報の整理。
幸せを感じる瞬間:ご飯を食べる、友達と話す、甘いものを食べる、リラックスする、眠ること。
余白の時間の使い方:友達と遊ぶ、旅行、睡眠、新しい趣味。
社会全体のキーワード:平和、自由、ロボットとの協同・協調、多様性。

7班 ― カオス
AIが主に担っていること:運転、日程調整などの事務作業、スケジュール管理、服選び、冷蔵庫の中身からその日の献立を考える、水回りの掃除。
幸せを感じる瞬間:人を感じる瞬間、人と関わる瞬間、美味しいごはんを食べているとき、睡眠、ガチャガチャで当たりを一発で引いたとき、運動している時間。
余白の時間の使い方:人と関わる時間、ぼーっとすること、漫画や映画や音楽などエンタメを楽しむ。
社会全体のキーワード:カオス。

7つの未来像から見えてくるもの
7グループの成果を並べてみると、キーワードはバラバラでありながら、不思議と響き合う部分がある。「余裕」「自由」「自分で時間を使える」「快適」「ハイブリッド」「協調」「カオス」——表現は違えど、どのグループも「AIが面倒なことを引き受けてくれたあとの、人間らしい時間」をこそ幸せと感じていた。
AIに任せたい仕事として頻出したのは、家事、事務作業、運転、タスク管理といった日常のルーティン。一方で、幸せの瞬間として挙げられたのは、家族や友達との会話、美味しいごはん、眠ること、自然や動物に触れること、旅行——ごく身近で、派手さのないものばかりだった。
SNSの上では、より刺激的で「映える」体験が幸福の指標として並ぶ。しかし、いったんそこから距離を置いて自分のリアルな感覚に耳を澄ませたとき、若者たちが描いた未来は、きわめてささやかで人間的なものだった。生成AIが可視化したイラストは、数字や言葉だけでは伝わらないその手触りを、一枚の風景として残している。
「いいね」の外側にある幸せとは何か。この問いに対する一つの答えが、7枚のイラストと7つのキーワードに宿っている。