便利さも、人間らしさも。Z世代が思い描くAIとの未来
今回、私は同じ文化構想学部に通う友人2人にインタビューを行いました。
1人目は、現在大学2年生ながら2つのアルバイトに加えて営業系インターンを掛け持ちしているRくん。2人目は、現在大学3年生、広告系のサークル活動にのめり込みながらも、空いている時間とお金はディズニーにつぎ込むNさん。彼らにとっての「2050年人を幸せにするAI社会」はどのような社会なのか、性格の違いから現れるAI観の違いに注目しながら見ていきます。
みなさんも共感できる意見があるか、自分ならどうAIと付き合っていきたいか、ぜひ考えながら読んでみてください。
AIが当たり前な未来って?
2人が思い描く「理想の2050年」を見ていきます。
まずはRくん。「昔からみんなが想像していた“空飛ぶ車”が、実現している社会ってめっちゃよくないですか?」「車が浮いてること自体が目的じゃなくて、理想がちゃんと叶えられる社会がいいなって思うんです」

Rくんの描く2050年は、まるでSF映画のような光景。空を飛ぶ車、自動運転と手動運転の切り替え、選べる働き方。そこには「便利さ」や「効率」よりも、「夢がちゃんと叶えられること」へのロマンが詰まっていました。

次にNさん。「家の中に“モノ”がない未来」「壁にスクリーンが浮かんで、机に触れたらToDoリストが出てきたり、全部がシームレスにつながってる感じ」
Nさんの描く2050年は、ミニマルでスマートな生活空間。物理的な物がどんどん減っていく中で、自分の生活に本当に必要なものだけが浮かび上がってくるような、静かで整った世界です。その中でもNさんは、「便利になりすぎて人間らしさを失うのは嫌」とも語っており、AIと人間のバランスを大切にしているのが印象的でした。
AIは、気を使わずに頼れる相棒
Rくんは、毎日のようにAIを使っていると言います。「授業のレジュメを要約したり、レポートの構成を相談したり。週5くらいで使ってます」そんなRくんが最もAIに魅力を感じているのは、「気を遣わずに頼れる存在」という点でした。たとえば将来の介護については、こう語っています。
「人間に頼むと“悪いな”って思うけど、AIロボットなら気を遣わなくていい。それって実はめっちゃ大きいと思う」
人間だと生まれてしまう“申し訳なさ”。それを感じずにすむAIは、Rくんにとってまさに「合理的で便利な相棒」と言えます。
AIは、心が足りない存在
Rくんと対照的に、NさんのAIの利用頻度は月に1回ほど。課題やサークル活動で「発想のヒント」をもらうために使っているそうです。彼女がAIに対して強く懸念を示したのが、医療分野の話題。完全にAIが診察から手術まで担う病院を想像してもらうと、手術だけは「絶対に無理」と即答していました。
「ミスしないってわかっていても、“この人を治そう”って気持ちがあるかが重要。ロボットにはそれがないと思うから、怖いんです」
AIの性能ではなく、命に向き合う意思があるか。彼女にとってAIはまだ、命を委ねるには心が足りない存在なのかもしれません。
AIは、創造性では人間を超えられない存在
芸術の分野に話が及ぶと、2人とも「AIの技術力はすごい」と口を揃えました。Nさんは、AIが描いたゴッホ風の絵を本物と見間違えた経験についてこう語ります。
「AIの方が綺麗だったけど、“こっちがゴッホじゃない”と知ったとき、ちょっとショックでした。なんか悔しくて」
整っているから良いわけじゃない。揺らぎや違和感を含んだ表現にこそ、人間らしさが宿るとNさんは感じていました。Rくんもまた、「漫画は人間にしか描けない」と断言しています。
「AIが描いた絵って、たしかに綺麗なんだけど、面白くない。人間が描いた絵の方が迫力あるし、絶対惹きつけられる」AIは完璧さを再現できても、感情を動かす何かはまだ持っていない。
創造性という領域において、2人ははっきりとした“人間優位”のラインを引いていました。
AIは、”使う力”が問われる存在になる
将来のAI社会に向けて、人間が持つべき力は何か?という質問に対して、Rくんは迷わず「リテラシー」と答えました。「AIを使えば詐欺とかも進化すると思う。だから騙されない力が必要。情報を見抜く目がないと、一瞬でやられる気がする」
Nさんも「AIを教える“インストラクター”みたいな仕事が生まれそう」と語り、AIを使う人間の側のスキルがますます重要になるという考えに同意しました。
AIは万能ではありません。だからこそ、「どう使うか」が人間の知性として問われる時代がやってくると言えます。
おわりに
AIがどんなに進化しても、最後に決めるのは人。便利さにワクワクするのも、人間らしさを大事にしたいと思うのも、どちらも等しく未来をつくる力になる。そんなことを2人のインタビューから改めて感じました。みなさんも、これから先どんな未来が待っているのか、その中で自分はどのようにAIと関わっていくのか、想像してみてくだい!