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シリーズ!AI×Z世代 #25

AI×音楽でつくりたい世界へ

私たちのゼミでは、「2050年の理想社会とAIの関係」について考えています。今回は、インフォーマント21(以下、i21さん)とインフォーマント22(以下、i22さん)にインタビューを実施しました。両者ともに大学3年生で、日常的にAIに触れながら学び、働き、将来を考えています。彼らが描くAI観と理想社会を紹介します。

AIをどう捉えているのか

まず浮かび上がったのは、AIに「万能さ」を期待していないという点です。

i21さんは「画像診断やデータ処理の正確さではAIに安心感がある」と話す一方で、「最後の判断は人間であってほしい」と強調しました。医師が患者の声色や生活背景まで考慮できるからこそ、AIとのハイブリッド型医療が望ましいと考えています。

i22さんも「AIが正しい答えを示しても、自分にとってベストとは限らない」と指摘。効率や精度はAIに任せつつ、最終判断は人間に残す形に安心感を持っていました。

つまり両者とも、AIを「相棒的な存在」として信頼しつつも、「丸投げはしない」距離感を理想としているのです。

日常に溶け込むAI

健康分野の話題では、すでに生活の一部としてAIが使われている様子が語られました。

i21さんはiPhoneの「ヘルスケア」アプリやスマートウォッチを活用し、日々の歩数や睡眠を記録。i22さんも「気づけば身近でAIにサポートされている」と述べました。両者にとってAIは、ガチの健康オタクになるためのものではなく、「ちょっと気になる時に相談できる安心感」を与えてくれる存在のようです。

ただし、介護に関しては不安を抱いていました。i21さんは「地方や独居高齢者が増える中で、人間の目が届かない現場が増えるのでは」と懸念。i22さんは「技術だけでなく、人間のぬくもりとテクノロジーの両立が必要」と述べ、AIの限界と可能性を冷静に捉えていました。

仕事とAIの共創

二人にとって「働く」とは、単なるお金稼ぎではありません。

i21さんは「自分の価値を社会の中で試し続けること」と語り、i22さんは「誰かに必要とされながら自分の可能性を更新していくこと」と表現しました。共通するのは、仕事を、挑戦と成長の場として捉えている点です。

AIとの関わりでは、新しい職業の可能性が挙げられました。i21さんは「AIと人間らしさが交差する場に新しい仕事が生まれる」と期待。i22さんも「広告や番組の企画をAIとブレストし、人間が統合する、AI共創ディレクターのような職種」を想像しました。

それでも人間にしかできないのは「心を動かす仕事」。表現・演出・エンタメ領域での、エモさや、間はAIが苦手とする領域であり、二人ともそこに強い自負を持っていました。

芸術とAI

芸術の話題では、両者の本音がにじみ出ました。

i21さんは「AIの作品はきれいだけど、引っかかりがない」と率直に語りました。i22さんは「人間が出した構想にAIが応える形なら可能性を感じる」と前向き。共通していたのは、「最終的に意味を込めるのは人間」という意識です。構想やテーマをAIに丸投げするのではなく、AIはあくまで、補助的な役割を担う共作者。人間が責任を持って「これで完成」と判断してこそ、作品に命が宿ると考えていました。

教育におけるAIの使い方

二人とも学業で生成AIを活用しており、レポートの構成整理やリサーチ補助に役立てていました。その上で「AIをどう使ったか」を明記させる大学の姿勢について、学びの一部として肯定的に捉えています。AI教育の導入時期については、小学校高学年からが適切という意見で一致。問いを立てる力が育ち始める段階で、AIの出力と比較・検討を行う練習ができると考えていました。

倫理と責任

AIのリスクについては、開発者だけに責任を押し付けるのではなく「社会全体で育てていくべき」というスタンスでした。

i21さんは「技術の精度だけでは防げない」と述べ、i22さんも「想定外を前提にした設計が必要」と強調。AIの限界を認めながらも、どう使うかを人間社会が共有していく必要性を示唆していました。

2050年の理想社会

i21さんの理想

  • 太陽光パネルを備えたビル
  • 緑豊かな都市
  • 多様な人々とロボットが共に暮らす社会
  • 空を飛ぶ車

i22さんの理想

  • 人感センサー付きの傘
  • 手に持たなくても雨や日差しを避けられる便利な暮らし

どちらの理想も「AIに任せすぎない」視点と、「人間の心や多様性を大事にする」価値観でつながっています。

i21さんの描いた理想図
i22さんの描いた理想図

まとめ

今回のインタビューから浮かび上がったのは、「AIに任せるけど、丸投げはしない」という両者のスタンスでした。AIは医療・仕事・教育・芸術など幅広く活用される一方で、人間の判断や感情の領域は残されるべきだと考えています。

2050年に向けて、AIは人間の可能性を拡張する“相棒”となり、便利さと人間らしさを両立させる社会像が見えてきました。AIと共に歩む未来は、効率や合理性の追求だけではなく、人間の温かさや表現力をどのように守り続けるかにかかっているのかもしれません。

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