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シリーズ!AI×Z世代 #17

AIと人間の“ちょうどいい距離感”を探して

みなさま初めまして、リポーターのミサトです! 私がインタビューした2人の若者のありのままの言葉からみる、「理想のAI社会」について、この場を借りてお伝えできたらなと思います!

AI社会の未来について考えるとき、「便利になる」「効率化される」といった言葉がよく飛び交っています。でも実際に私たちが理想とする社会は、ただ効率的なだけで良いのでしょうか。そんな疑問を明らかにするために今回インタビューさせていただいたのは、都内の私立大学に通うエミリさんと、関西の国立大学で学ぶタケヒロくん。どちらも20歳の大学3年生、いわば「AI社会を本格的に生きる世代」です。

「AIに全部任せて人は楽をする未来」ではなく、「AIと人がどう一緒に歩むか」がポイント。2人との会話から浮かび上がったのは、人間らしさを守りつつ、AIを“超優秀なサポーター”にする理想像でした。

未来のスケッチ:絵に描いてみた“2025年の理想の社会”

「2050年の理想の社会って、どんな感じ?」と尋ねると、エミリさんは笑顔で「やっぱり便利で余裕のある日常!」と即答。ロープウェイで混雑知らず、ドローン傘で手ぶら通学、家に帰れば家事ロボットが掃除と洗濯を済ませて、夜は3Dホログラムで推し活ライブに参戦。聞いているこちらまで「その未来、早く来い!」と叫びたくなるような、楽しくてキラキラした日常像でした。

「ちょっと絵に描いてみてよ」とお願いすると、エミリさんはペンを走らせ、空を舞うドローン傘やホログラムステージを楽しそうに描き込みました。出来上がった絵はまさに“便利で生きやすい未来の暮らし”そのものです。

エミリちゃん作:「便利さと楽しさで彩る余裕ある毎日」

一方でタケヒロくんは少し落ち着いたトーンで「僕は余白を生み出すインフラ都市が理想」と語ります。リニア新幹線やドローン配送が当たり前になり、AI家電や薄型ソーラーパネルが生活に溶け込む世界。効率化の先にできた余白時間を、人は創作や学びに集中できるようになる。彼も同じように図を描き、そこには鉄道網や空を飛ぶ物流ドローン、そして芸術複合施設が並んでいました。

タケヒロくん作:「余白を生み出すインフラ都市の未来」

どちらの未来像にも共通していたのは「AIは人に時間を返す存在であるべき」という信念でした。次の項目からは、AIにまつわる様々な分野ごとにインタビュー結果を報告させていただきます!

健康と医療:AIドクターよりも“安心のひと言”、ケアは選べる未来に

医療について2人の意見は一致していました。AIの診断や予測精度には大いに期待しつつも、「最後に“大丈夫ですよ”と声をかけてくれるのは人であってほしい」とエミリちゃん。タケヒロくんも「胸を開けられたり大事なとこの手術をされるなら人間の外科医がええな」とうなずきます。AIには生活習慣のアドバイスや予測といった“気づかせる役”を、そして人には命を左右する“決める役”を。それぞれの役割分担が自然に見えてきました。

話はそのまま介護に移りました。エミリさんは「入浴や移動は人に寄り添ってほしいけど、排泄介助みたいな恥ずかしい部分はAIに」と率直に話します。一方でタケヒロくんは「安全第一で考えればAIが合理的」と割り切り派。立場は違えど2人が一致したのは、「最終的に誰に介助してもらうかは本人が選べる未来が望ましい」という点でした。医療も介護も、AIに丸投げするか人に任せるかという二択ではなく、状況や気持ちに応じて選べる柔軟さこそが大切だと感じさせられました。

仕事:めんどくさい雑務はAIに丸投げ!

「情報収集や要約、日程調整や定型文のメール返信なんて、全部AIにやってほしい!」とエミリさん。タケヒロくんも「そうやねん、ああいう雑務で一日が終わるのはもったいないなあ(笑)」と同意します。

2人の共通認識は「人間は創造や判断、責任に集中したい」ということ。ただし、政治や社会の最終的な意思決定をAIに任せることには強い拒否感がありました。「AI議員なんてありえへん。問題が起きたとき、誰が責任を取るんやろう?」とタケヒロくんが言うと、エミリさんも「それはほんと困る!」と即答。

さらに「AIで仕事が減った分、社会がサポートする仕組みが必要」という現実的な意見も出ました。富や利益の分配を人に還元することも、AI社会の必須条件になりそうです。

芸術:AIはツール、人の手はストーリーを生む

芸術について語るエミリさんは、「AIが勝手に学習して作品をつくるのはモヤモヤする」と苦笑い。でも作品そのものを楽しむことには前向きです。「やっぱり人が時間をかけてつくった作品って、伝わり方が違う」と言葉を重ねました。

タケヒロくんは「AIで創作のハードルが下がるのは良いことやと思う。でも突拍子もないひらめきはまだ人間が強いと思うなあ」とクールな分析。2人の共通点は「AIは0から1を生み出すきっかけや量産ツールには向いているけど、心を震わせる物語や意味づけは人間が担うべき」というスタンスでした。

教育:AI先生は“補助役”、でも最後は自分の頭で

教育の話題では意見が分かれました。エミリさんは「高校までは自分で考える力を鍛えたいからAIは最小限に」と慎重派。逆にタケヒロくんは「小学校低学年からAIを導入して苦手を早く克服した方が効率的」と積極派でした。

それでも2人が完全に一致したのは「AIにレポートを書かせるのはアウト。でも叩き台や要点整理に使うのはアリ。そのうえで必ず自分の言葉に直す」というルール。AIは先生ではなく、あくまで学びを助けるチューター的存在になるのが理想のようです。

倫理:共感と責任を忘れないために

最後に倫理の話題になると、2人の表情は引き締まりました。メンタルケアは“共感”が命であり、AIでは限界があること。差別については「AIは社会の偏見をそのまま映す鏡。だから導入を決める人間が責任を取るべき」と声を揃えます。

軍事利用についても「人命を守る技術になるかもしれないけど、責任の所在があいまいになるのは怖い」と慎重な姿勢を崩しませんでした。ここでも結論は「AIは補助であり、人間が最後に責任を負う」という一点に集約されていきました。

おわりに

インタビューを通じて見えてきたのは、エミリちゃんが大切にしている「寄り添い」と、タケヒロくんが重視する「合理」。一見すると対立しているようで、実は「AIは人を補助する存在であり、最後に責任と創造を担うのは人間」という共通のビジョンにたどり着いていました。

AIにすべてを任せる未来よりも、AIで余裕を生み、その余白を、人間が“人間らしく”生きる未来の方がずっと魅力的です。2050年を迎える私たちがデザインするべき社会は、便利さと人間らしさが矛盾せずに共存する世界。そんな未来なら、きっと毎日がもっと楽しく、安心できるものになるはずです!

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