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シリーズ!AI×Z世代 #21

AIにどこまで任せる?

はじめまして!今回は「理想のAI社会」について、2人の大学生にインタビューをしました。協力してくれたのは、大学3年生のSさんと、大学4年生のTくん。

Sさんは就職活動を控えていて、普段からAIを生活に取り入れているタイプです。時間管理や調べ物でAIを便利に使う一方、将来働きたい広告の分野では「AIに仕事を奪われてしまうのでは」という不安も抱えています。期待と不安の両面からAIを見ているのが印象的でした。

Tくんは卒業後に物流関係の仕事に進む予定で、アルバイトや就活を通じて現場の効率化を肌で感じてきたそうです。すでにAIがスケジュール管理や事務を担当している様子を見て、「AIと人間の役割分担は現実に始まっている」と冷静に語ってくれました。

学年も進路も異なる2人ですが、インタビューを進めると、共通して「AIに任せたい部分と、人に残すべき部分をどう線引きするか」を大切にしていることが分かってきました。

生活の中で見えるAIの役割

インタビューで繰り返し出てきたのは、「AIと人間の役割分担」でした。Sさんは医療の場面を例に挙げ、「病院の予約や受付はAIに任せたい。でも手術の説明や触診は人間の先生がいい」と話していました。AIは正確さや効率性に優れていますが、そこに「安心感や信頼関係」が伴わなければ不安になる、というのがSさんの考えです。

Tくんも同じように、「貨物のスケジュール管理や在庫処理はAIで十分だが、子どもの教育や人とのやりとりは人間に残したい」と語っていました。日常業務の効率化はAIに任せ、感情や信頼をともなう場面は人に残す。このような線引きは分野が違っても共通していました。

芸術に関しても同じ傾向が見られました。Sさんは「効率が重視されるものなら積極的にAIを活用できる」と述べていました。Tくんも「ゼロからの発想は人間が担うべきだが、構成や整理はAIに向いている」と考えており、人間とAIの役割を明確に分けていました。

教育についても似た考えがありました。Tくんは「大学のレジュメをAIに要約させて効率化している」と日常的に活用している一方で、「作文力や思考力が失われるのはよくない」と危惧しています。Sさんも「AIを導入するならリテラシー教育を徹底する必要がある」と強調し、正しい使い方を学ぶ重要性を語っていました。

AIに抱く期待と不安

AIについての考え方には、期待と不安の両面が見られました。Sさんは広告業界に関心を持っていますが、「広告はAIに代替されるのでは」という不安があるようでした。しかし同時に「自分のアイデアを膨らませる相棒としてなら使える」とも話し、AIを完全な脅威ではなく、工夫次第で可能性を広げる存在として見ていました。

Tくんは「現場ではすでにAIと人間の役割分担が始まっている」と冷静に語っていました。貨物の分野ではAIがスケジュールやデータ処理を担い、人間は監督や判断を担当する仕組みが生まれつつあります。人がすべてを抱えるよりも合理的だと感じており、AIを前向きに受け止めていました。

倫理的なテーマでは、2人とも慎重な姿勢を見せました。AIによる差別については社会にある偏見が反映されていると理解しており、問題はAIそのものではなく、人間社会にあると冷静にとらえていました。戦争利用については「AIはためらわずに人を殺してしまうのが怖い」と強い懸念が示され、「最終判断は人間に残すべき」という姿勢が見られました。

2050年の理想の社会の絵

インタビューの途中で、2人に「2050年の理想の社会」を絵で表してもらいました。

Sさんの絵は家庭を舞台にしたものでした。リビングではAIロボットが掃除や料理をし、高齢者のベッド脇ではセンサーが見守っていました。家族は安心して過ごしており、また、通訳機を使って外国の友人と会話する様子も見られます。家族の日常を守りながら、交流を広げる未来を思い描くSさんの価値観が反映されていました。 

Tくんの絵は都市全体を描いたスケールの大きなものでした。道路には自動運転車が走り、建物にはソーラーパネルが並んでいます。背景には緑豊かな自然が広がり、AIはエネルギーや交通を効率的に管理していました。人々は便利さを享受しつつ、環境と共存する暮らしを送っており、持続可能性と利便性を両立した未来像が表れていました。

テーマは違っても、両者の絵に共通していたのは「AIは人間を補助する立場にとどまり、人間が主役である」という点でした。Sさんは家庭の安心を、Tくんは社会全体の持続性を重視していましたが、AIを支える存在として描いたことは一致していました。

おわりに

インタビューから浮かび上がったのは、「効率や数値処理はAIに、感情や信頼は人に」という共通の認識です。幅広い話題を横断しても、この線引きは一貫していました。そして、最後に描かれた理想の社会の絵でも、AIは生活を支える立場にとどまり、人間が中心である未来像が示されていました。

2050年の社会はまだ先の話ですが、2人の話は「AIをどう使うかを人間が主体的に決めること」の重要性を教えてくれました。AIを活用しながらも、人間らしさを失わない未来をつくることが、これからの課題になるのではないでしょうか。

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